計算例
4つの計算例はいずれもエンジン pythagorean の compute で再計算しています。表示の口径は小数第8位まで、末尾の0は省略です。
例1:定番の 3-4-5
入力:a=3、b=4。
- a2+b2=9+16=25。
- c=25=5。
- 面積 S=3×4/2=6。
画面表示:斜辺 5、面積 6。これが最小の整数ピタゴラス数で、『周髀算経』の「勾三股四弦五」がまさにこれを指しています。
図1:例1の直角三角形。斜辺は直角に向かい合う辺で、常にもっとも長い
例2:斜辺から直角辺を逆算する
入力:c=13、b=5(a は空)。
- c2−b2=169−25=144。
- a=144=12。
画面表示:直角辺 a 12。このとき「面積」の欄が 0 と表示されることに注意してください。エンジンは2つの直角辺がどちらも入力であるときにだけ面積を計算し、逆算した a は面積の計算に使いません。面積を見たい場合は、12 を「直角辺 a」に書き戻して斜辺を空にすると 30 が得られます。
例3:はしごの問題
長さ 6.5 m のはしごを壁に立てかけ、はしごの脚が壁から 2.5 m 離れているとき、はしごの先端の高さはいくらでしょうか。ここでは斜辺がはしごで、直角辺が「壁からの距離」と「高さ」です。
入力:c=6.5、a=2.5(b は空)。
- c2−a2=42.25−6.25=36。
- b=36=6。
画面表示:直角辺 b 6。逆に、壁からの距離 2.5 m、高さ 6 m がわかっていれば、a=2.5、b=6 を入力して斜辺 6.5、面積 7.5 が得られます。
例4:無理数になる結果と画面の対角線
入力:a=1、b=1:c=2 で、画面表示は 1.41421356(小数第8位まで)、面積は 0.5 です。歴史上はじめて「分数では表せない」ことが証明された長さです。
入力:a=1920、b=1080(1080p 画面のピクセル幅と高さ):対角線は 2202.90717008 ピクセルです。この画面が27インチ(対角線 27 in)と表示されているなら、c=27、b=13.24(高さ)として逆算すると幅は 23.53088184 in になります——「27インチ」が指すのは幅ではなく対角線です。
例1の入力はそのままパネルに入れて再現できます。a、b をどちらも 1 に変えると、斜辺は 1.41421356 になります。
原理と導出
なぜ直角辺の平方の和が斜辺の平方になるのか
もっとも直感的な証明は図の並べ替えです。1辺が a+b の大きな正方形を取り、それを2通りの方法で切ります。
- 切り方1:4つの辺の上にそれぞれ点を取り、大きな正方形を4つの合同な直角三角形(直角辺 a、b)と、中央の傾いた正方形に分けます。傾いた正方形の辺は直角三角形の斜辺 c そのものなので、中央の面積は c2 です。
- 切り方2:同じ4つの三角形を2つずつ組み合わせて2つの a×b の長方形にし、大きな正方形の2つの角に置くと、残るのはちょうど a×a と b×b の正方形で、面積は a2+b2 です。
どちらの切り方でも使う4つの三角形はまったく同じで、大きな正方形も同じなので、残りの面積は等しくなければなりません:c2=a2+b2。
図2:同じ (a+b)² の2通りの切り方。4つの三角形が同じなので c² = a² + b²
エウクレイデス『原論』第I巻の命題47は別の証明を与えています。3辺の外側に正方形を作り、2つの小さな正方形の面積の和が大きな正方形の面積に等しいことを示すものです。命題48は逆定理を証明しています。三角形が a2+b2=c2 を満たせば、それは直角三角形です。逆定理は工学で「3-4-5 で直角を出す」根拠になっています。3、4、5 の長さで囲んだ三角形の挟角は、正確に 90° です。
実は「距離」の定義でもある
直交座標系では、(x1,y1) から (x2,y2) への2つの変位 Δx、Δy は互いに直交するので、2点間の直線距離は斜辺になります:d=Δx2+Δy2。これが2点間の距離計算ツールの式です。3次元への拡張も三平方の定理をもう一度使うだけです(まず底面の対角線を計算し、それと高さで新しい直角三角形を作ります)。ベクトルの大きさ、複素数の絶対値、統計の標準偏差(偏差の2乗和の平方根)もすべて同じ式です。
余弦定理との関係
任意の三角形について、c2=a2+b2−2abcosC が成り立ちます。挟角 C=90° のとき cosC=0 で最後の項が消え、三平方の定理に縮退します。つまり三平方の定理は、余弦定理の直角の場合の特別な形です。逆に、c2 と a2+b2 の大小関係から、挟角が鋭角(c2<a2+b2)か鈍角(c2>a2+b2)かを判定できます。
ピタゴラス数
3辺がすべて整数である直角三角形をピタゴラス数(ピタゴラス三元数)と呼びます。小さいほうからいくつか挙げます。
| (a,b,c) |
検算 |
| (3, 4, 5) |
9+16=25 |
| (5, 12, 13) |
25+144=169 |
| (8, 15, 17) |
64+225=289 |
| (7, 24, 25) |
49+576=625 |
| (20, 21, 29) |
400+441=841 |
エウクレイデスの公式は、すべての原始ピタゴラス数を生成できます。互いに素で偶奇の異なる正の整数 m>n を取り、a=m2−n2、b=2mn、c=m2+n2 とします。m=2,n=1 で (3, 4, 5)、m=3,n=2 で (5, 12, 13) が得られます。ピタゴラス数を比例拡大したものもピタゴラス数のままです——(6, 8, 10) や (0.3, 0.4, 0.5) も、この計算ツールで同じようにきれいな結果になります。
歴史
バビロニアの粘土板プリンプトン322(紀元前1800年ごろ)には、すでに多くのピタゴラス数が列挙されています。中国の『周髀算経』には「勾三股四弦五」の記載があり、『九章算術』の「勾股」の章は三平方の定理を使って問題を解く方法を体系的に示しています。趙爽が注を付けたときの「弦図」は、上の並べ替えによる証明そのものです。ピタゴラス学派(紀元前6世紀ごろ)がもっとも早い一般証明を与えたと考えられており、2 の発見によって分数で書けない長さの存在に気づきました。「勾」と「股」は直角三角形の2つの直角辺の古称で(短い辺が勾、長い辺が股)、「弦」は斜辺です。
平面上でしか成り立たない
三平方の定理はユークリッド平面幾何の定理です。球面上では、互いに直交する2つの大円の弧 a、b と3つ目の辺 c は cosc=cosacosb(単位球)を満たし、3辺が球の半径よりずっと小さいときにだけ a2+b2=c2 に近づきます。地図上の数十キロメートルなら三平方の定理を安心して使えますが、大陸をまたぐ距離には球面の式が必要です。