計算ツールについて
モル濃度計算ツールは c=n/V を解きます。溶質の物質量 n(mol)と溶液の体積 V(L)がわかれば物質量濃度 c(mol/L)が求まり、3つの量のうち任意の2つがわかれば残り1つを逆算できます——58.44 g の食塩を 1 L に定容すると何 mol/L か、0.1 mol/L の溶液を 500 mL 調製するには溶質を何 g 量り取るか、0.2 mol の溶質を 2 mol/L にするにはどれだけの体積が必要か。
化学における「濃度」にはいくつかの流儀があります。モル濃度、質量分率、質量濃度、質量モル濃度、ppm です。このページは化学クラスターの拠点です。mol とは何か、モル質量がなぜ数値上は相対分子質量に等しいのか、各種濃度をどう換算するのか、「1 L の水に 1 mol 溶かす」がなぜ 1 mol/L にならないのかを、ここで詳しく説明します。対になる2つのページには、それぞれ固有の内容だけを書きます。質量から物質量を求めるのは物質量計算ツール(n=m/M)、濃溶液を目標濃度に希釈するのは希釈計算ツール(C1V1=C2V2)です。
このツールがしないこと:質量から n を求めること(先に物質量計算ツールへ)。mL ↔ L の換算(250 mL は 0.25 と入力)。質量分率・密度・活量の計算。溶解時の体積変化の扱い。
計算例
4つの計算例はいずれもエンジン chem-molarity の compute で再計算しています。表示の口径は小数第8位まで、末尾の0は省略、単位は mol・L・mol/L です。
例1:4つのビーカー
既定の入力 n=0.5、V=1:c=0.5。画面表示:濃度 c 0.5。
体積を 0.5 に変えると(溶質はそのまま、体積は半分):画面表示は 1。n を 1 に、V を 1 に戻すと(58.44 g の食塩を 1 L に定容):画面表示は 1。2杯目と3杯目は、溶質の総量が2倍違うのに濃度は同じです——濃度は「1 L の溶液にどれだけ溶けているか」であり、「全部でどれだけあるか」ではありません。4杯目:0.1 mol の溶質を 250 mL に調製、n=0.1、V=0.25:c=0.4。画面表示は 0.4。
図1:例1の4つのビーカー。濃度を見るのは点の密度であり、点の総数ではない
例2:0.1 mol/L の食塩水 500 mL を調製するには何を量り取るか
物質量を逆算します。n を空にし、c=0.1、V=0.5 を入力:n=0.1×0.5=0.05。画面表示:物質量 n 0.05。NaCl のモル質量は 58.44 g/mol なので、0.05×58.44=2.922 g を量り取ります。
操作の順序はこのページで繰り返し強調する口径です。固体を 2.922 g 量り取り、500 mL のメスフラスコに入れ、水を加えて溶かしたあと標線まで水を加えます——溶液の全体積は 500 mL です。先に水 500 mL を量ってから塩を加えると、得られる溶液の体積は 500 mL よりやや大きく、濃度は 0.1 より少し低くなります。
体積の逆算:0.2 mol の溶質を 2 mol/L に調製します。V を空にし、n=0.2、c=2 を入力:V=0.1。画面表示:溶液体積 V 0.1——100 mL です。
例3:ブドウ糖、生理食塩水、そして2種類の「濃度」
ブドウ糖:9 g のブドウ糖(M=180.156)を 100 mL に調製します。まず物質量計算ツールで n=0.0499567 を求め、n=0.0499567、V=0.1 を入力:画面表示:濃度 c 0.499567——約 0.5 mol/L です。
生理食塩水:0.9% 生理食塩水とは 100 mL 中に 0.9 g の NaCl を含むもの、つまり 9 g/L であり、これは質量濃度(g/L)であってモル濃度ではありません。換算:n=9/58.44=0.15400411 mol。n=0.15400411、V=1 を入力:画面表示は 0.15400411——0.154 mol/L です。同じ「9 g」でも、ブドウ糖溶液は 0.5 mol/L、食塩水は 0.154 mol/L です。NaCl の「単位」1個の質量がブドウ糖分子1個の3分の1だからです。浸透圧が見るのは粒子の数(mol)でありグラム数ではないため、医学ではどちらの液体も mol で比較します。
海水:海水中の塩分はおよそ 0.6 mol/L の NaCl に相当します。n=0.6、V=1:画面表示は 0.6——生理食塩水のほぼ4倍で、これが海水を飲むと脱水する定量的な理由です。
例4:桁を1つ間違えると結果が1000倍ずれる
例1の4杯目の 250 mL をそのまま V=250 と入力すると:n=0.1、V=250:c=0.0004。画面表示:濃度 c 0.0004——正しい値 0.4 より1000倍小さくなります。エンジンには、mL で入力するつもりだとわかりません。図1の右下の注記はこの点の注意喚起です。
逆に、体積の逆算で 0.1 が得られたら、それは 0.1 L = 100 mL であり、0.1 mL ではありません。
例1の入力はそのままパネルに入れて再現できます。体積を 0.5、0.25、0.1 に変えて、濃度が 1、2、5 mol/L と反比例で増えるのを見てください。物質量を 0.0499567、体積を 0.1 に変えると、例3のブドウ糖溶液になります。
原理と導出
mol:数を数えるための量
物質量 n は SI の7つの基本量の1つで、単位はモル(mol)です。2019年5月20日に発効した SI 第9版は、1 mol は 6.022 140 76 × 10²³ 個の基本単位を正確に含むと定義しています。この数がアボガドロ定数 NA の数値です。1971年から2019年までの旧定義は「0.012 kg の炭素12に含まれる原子の数」で、NA は測定値でした。新しい定義でそれが正確な値になると同時に、12 g の炭素12の物質量は正確な 1 mol ではなく約 1 mol になりました(ずれは 10−9 のオーダー)。
なぜグラムではなく mol を使うのか。化学反応は個数で進むからです。Na 1個に Cl 1個、H₂ 2個に O₂ 1個。質量が大きく異なる分子でも、個数の比でなければ反応式は書けません。mol は「個数を 6.022×1023 倍に拡大する」計数単位で、ちょうど「1ダース」が 12 であるのと同じです。
モル質量がなぜ相対分子質量に等しいのか
相対原子質量のものさしは「炭素12原子の質量の 1/12 = 1」です。旧定義はさらに、12 g の炭素12がちょうど 1 mol であると定めていました。この2つの取り決めが合わさることで、どんな物質でも 1 mol の質量(g)は数値上その相対分子質量に等しくなります:H₂O の相対分子質量は 18.015、モル質量は 18.015 g/mol です。2019年以降、この相等は 10−9 のオーダーまでしか正確ではありませんが、日常の計算ではまったく無視できます。標準原子量は IUPAC の CIAAW 委員会が管理しており、Na 22.990、Cl 35.45、C 12.011、H 1.008、O 15.999 です——質量から mol への一歩は物質量計算ツールにあります。
5種類の濃度とその換算
| 名称 |
記号 |
定義 |
単位 |
使う場面 |
| 物質量濃度(モル濃度) |
c |
n溶質/V溶液 |
mol/L |
反応量論、滴定、浸透圧——個数で比較する場面 |
| 質量分率 |
w |
m溶質/m溶液 |
無次元、ふつう % で表す |
試薬ラベル(37% HCl、98% H₂SO₄)、食品、合金 |
| 質量濃度 |
ρB |
m溶質/V溶液 |
g/L、mg/mL |
医薬(0.9% 生理食塩水 = 9 g/L)、水質 |
| 質量モル濃度 |
b |
n溶質/m溶媒 |
mol/kg |
沸点上昇、凝固点降下;温度で変化しない |
| ppm / ppb |
— |
質量比 10−6 / 10−9 |
— |
微量:希薄な水溶液では 1 ppm ≈ 1 mg/L |
換算の橋渡しになるのは密度 ρ(g/mL)とモル質量 M(g/mol)です:
c=M1000ρw
試薬の濃塩酸を例にすると:w=37%、ρ=1.18、MHCl=36.46:c=1000×1.18×0.37/36.46=11.97≈12 mol/L——これはまさに希釈計算ツールの既定の原液濃度です。密度がなければ換算できません:質量分率は「100 g の溶液に何 g 含まれるか」、モル濃度は「1 L の溶液に何 mol 含まれるか」を表し、両者の間には「1 L の溶液はどれだけ重いか」が隔てています。
質量濃度とモル濃度の違いは M だけで、c=ρB/M です。例3の生理食塩水はこうして換算しました。質量モル濃度とモル濃度は希薄な水溶液では数値が近く(水 1 kg ≈ 1 L)、濃い溶液では差がはっきりします(計算例のあとの注記を参照)。
体積は足し算できない、温度でも変わる
V は溶液の全体積であり、溶媒の体積+溶質の体積に等しくはありません:エタノール 50 mL に水 50 mL を加えると約 96 mL になります。塩が水に溶けるときも体積は変わります。だから標準的な調製手順は「まず溶かし、それから定容する」で、メスフラスコを使って全体積を標線ぴったりに合わせます。メスフラスコは 20 °C で校正されているため、温度がずれると読みに系統誤差が入ります。温度変化が大きい場面(沸点測定、低温反応)では、温度で変わらない b や w を使います。
反比例と「希釈」の関係
n が一定のとき c∝1/V で、これは反比例です:体積が2倍になれば濃度は半分になります(例1の1杯目と2杯目)。これを「希釈の前後で n が変わらない」と言い換えれば c1V1=c2V2 です——希釈計算ツールのページ全体は、この系論に体積の単位と調製手順を足したものにすぎません。